記者の目:公教育に一石 和田中・夜スペ1カ月 三木幸治

毎日新聞 2008年2月28日 0時03分
 東京都杉並区立和田中学校での塾講師による2年生を対象とした補習「夜スペシャル」(夜スペ)が始まり、1カ月がたった。義務教育である中学校と塾の連携には、「公教育を軽視している」「受講した子供とそうでない子供の学力の差を広げる」など批判的な声もあるが、はたして現場はどうなっているのか。学校を訪ねて考えた。

 夜スペは、進学実績を積み上げて人気を集める私立中学への対抗策として、民間から起用されたリクルート社出身の藤原和博校長が導入した。少子化の中で生き残りを図る大手進学塾「サピックス」とタッグを組んで続けている。授業は月、水、金曜日の夜に、数学2コマ、国語1コマ、土曜の午前中に英語3コマ。授業料の額も評価が分かれるが、月額2万4000円と塾の半額程度に抑えてある。

 現場を訪ねて改めて感じたのは、夜スペが学力だけでなく、考える力の向上を目指している点だった。

 例えば数学−−。男性講師は、生徒を前に問いかけた。「携帯電話を買う場合、どのような基準で選びますか。値段(a)、デザイン(b)、機能(c)の3要素で決め、価値を(P)として数式にしましょう」

 この場合、答えはひとつではない。「P=3a+2b+5c」となれば、機能重視ということになる。日常生活での何気ない買い物を数式で表現する「生徒に考えさせる問題」だ。

 「やっぱりデザイン重視でしょ」「テレビが見られるワンセグがいいな」。生徒は歓声を上げながら、答えを書き込む。講師は「それ、面白いね」と声をかけて、教室を回る。

 数学の2コマのうち1コマは考える授業が組み込まれ、もう1コマで、方程式の応用問題など受験に直接結びつく問題を扱う。「論理的思考力」を鍛える問題と、サピックスの「受験対策」を合わせた内容だ。

 宿題もあるし、授業の最初には前回の復習テストがある。ある生徒が「テスト前以外、家では一度も勉強したことなんてなかったのに」と苦笑するように、自宅で勉強する習慣が身に着くように仕向けている。

 印象に残ったのは子供たちの表情だ。「授業は楽しい」と生き生きとした表情で口をそろえた。ある生徒は「授業が終わるのはあっという間。問題も面白いし、先生が冗談で場を盛り上げてくれる」。別の生徒は「授業は充実している。問題は難しいけど、質問すれば丁寧に答えてもらえる。勉強する習慣もついた」と話した。

 夜スペは受講希望者を募っての授業で、2年生128人から集まった19人は、もともとやる気がある。だから、楽しいとの感想は当然との見方もあるが、満足げな生徒の表情を見れば、それ以上に「楽しさ」「面白さ」を授業に見いだしているようにみえる。

 一方、教える側に夜スペはどう映っているのか。学校の授業は、あらゆる子供たちが対象となるため、成績の中位層以下に指導の質や量を合わせざるをえない。ある程度「できる子」が集まった夜スペは、その分、効率のいい授業ができる。講師にとっても、面白い授業をやりやすい環境が整っているともいえる。実際、講師の一人は「学校では偏差値35から70の子供まで教えなければならない。夜スペのような授業はできない」と言う。

 こうした事情から、夜スペで「できる子」がますます学力を伸ばし、中位層以下との差が広がる、として「学力格差拡大」を懸念する声もある。

 しかし、和田中では、実は学力下位層を対象とした補習も行っている。都内初の民間出身の公立中校長となった藤原校長が03年の就任直後に始めた「ドテラ(土曜寺子屋)」だ。

 土曜の午前中、教室を開放し、生徒が宿題などを持ち込んで自習する。わからない問題は、学生ボランティアがサポートする。ドテラの存在は、子供の学力差に対し、和田中が多様な対応にトライしていることを示す。

 「さあこの問題、答えは何かな」。講師が生徒の名前を呼んで質問し、答えが合うと「さすが」とほめる。授業でのやり取りを見ていると、講師と生徒の一体感さえ感じた。

 公教育の世界に一石を投じた和田中の試み。具体的な成果は、1年後の高校受験の結果として問われることになるが、その数字だけで測れない部分もある。生徒たちが考えることの面白さや、学ぶ楽しさを自分のものにできるのか。私は前向きな挑戦として、夜スペを長い目でフォローしていきたいと思う。(社会部)


朝倉市家庭教師
川崎市麻生区家庭教師
神奈川県足柄上郡家庭教師
posted by キロリ at 12:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 公立中高一貫校ニュース
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